初期微動とは最初のP波が到達してからS波が到達するまでの間に起こる地震動、主要動とはS波が到達してからの地震動を指します。
初期微動継続時間P波とS波の速度の違いのために起こる、揺れ始めてから主要動の大きな揺れが来るまでの時間。 緊急地震速報が「間に合った」「間に合わない」という話は、「体に感じる揺れの始まり(震度1以上の強さの揺れになった時)」や「初期微動の始まり(P波が到達した時)」ではなく「主要動の始まり(S波が到達した時)」に対しての表現であるため、体に感じるような初期微動が始まってから緊急地震速報を受信しても主要動に「間に合った」となる場合があります。(緊急地震速報の猶予時間が数秒以上あったと推定される地域で「間に合わなかった」と感じる人が多く出る原因の一つ。) 走時震源から発したP波(Primary wave, 粗密波)やS波(Secondary wave, 剪断波)が観測点に到達するまでに要する時間を走時と呼びます。以下に示す図は、走時を震央距離と震源の深さに対して計算しプロットしたものです。ここでは地表より深い所ほど地震波が早く進むモデルで計算しているため、やや深い地震の方がごく浅い所で発生した地震よりも早く遠くにまで到達する部分が見られます。地震波の速度は地質構造や伝播方向・振動方向など様々な条件によって変動する部分もあるため、下の図で示した一次元(地震波の速度が地表からの深さに対してのみ依存すると仮定した)速度構造上での理論走時と実際の走時には違いが生じます。日本列島下の三次元地震波速度構造(防災科研)のように、より正確な地下構造を知る試みも行われていますが、現状の緊急地震速報では実用上、一般的に一次元速度構造から算出した走時表にて主要動の到達時刻予測が行われています(計算に必要なデータが大きくなりすぎる、計算に必要な時間が掛かりやすくなる、それほど精度は求められてはいない、などの理由で実用に至っていないためと思われる)。 以下は、地震発生からP波/S波が到達するまでの時間(P波走時・S波走時)、P波が到達してからS波が到達するまでの時間(初期微動継続時間)、またこれらの時間の計算に使用した一次元地震波速度構造(深さ約900km以浅はJMA2001モデル、約900km以深はIASP91モデルを使用)を示しています。 P波の理論走時と震源の深さ・震央距離の対応(縦軸=震源の深さ、横軸=震央距離、赤線=1秒間隔、青線=10秒間隔) S波の理論走時と震源の深さ・震央距離の対応(縦軸=震源の深さ、横軸=震央距離、赤線=1秒間隔、青線=10秒間隔) P波・S波の理論走時の差と震源の深さ・震央距離の対応(縦軸=震源の深さ、横軸=震央距離、赤線=1秒間隔、青線=10秒間隔) 上記理論走時の計算に使用した1次元地震波速度構造モデル(縦軸=地震波速度、横軸=地表からの深さ、緑線=P波速度、赤線=S波速度) |
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